清水 俊樹 
今回のテーマは、『格差社会』、『医療費、医療システム問題』の二つです。以下で、発表の内容を簡単に説明したいと思います。

格差社会

ここ最近、日本の格差が拡大しているという言葉が多いように感じられます。実際に、OECDも、ここ20年間での日本の格差拡大に注目をしているようです。(2006年6月27日朝日新聞夕刊より)

それでは、実際に日本のジニ係数の変移はどのようになっているのでしょうか。(注:ジニ係数とは、所得分配の不平等度を測る指標です。0が完全平等状態で、1に近づくほど所得分配の不平等度が高い事を意味します。[ものによっては、100をかけて、0〜100で示しているものもあります])

総務省統計局『H16全国消費実態調査』を参考にしてみると、一般に言われているように、1979年以降一貫して日本のジニ係数は大きくなっています。すなわち、所得分配の不平等度は増しています。その原因として一般的に挙げられる理由は、?高齢者世帯の増加、?若年層での失業、フリーター人口の増加、?能力主義、成果主義の導入、?所得税と住民税をあわせた税率を下げる事による、所得再分配機能の低下などが挙げられます。

それでは、日本のジニ係数(所得分配の不平等度)は、OECD加盟27カ国で比較すると、どのぐらいの位置にいるのでしょうか。OECD『Selection of Figures from OECD Questionnaire on Income Distribution and Poverty』より、「Gini coefficients of income concentration in 27 OECD countries, most recent year」を参考にここでは記したいと思います。

日本は27か国中17番目に所得分配の不平等度が小さい国であるという事です。参考までに、27か国中一番所得分配の不平等度が小さい国は、デンマーク、そして一番大きい国はメキシコであります。米国は、23番目であり、不平等度は大きい国であります。

日本の場合は、所得分配不平等は、機会の不平等を意味するといわれています。よって、格差の遺伝が生まれ、個人個人の運命は、生まれる前に決まってしまっている傾向があると言われています。

上記の事実をふまえ、ここで私たちが考えなければいけない事は、格差が広がる事をどうとらえるか、機会の不平等をどう考えるか、そして、これらを問題だと考えるのなら、具体的にどのような政策や、システムを作っていかなければならないのか。これらの事を考えなければいけない、という事がここで一番強く皆に伝えたかったことです。

医療費、医療システム問題

ここでは、前回の水谷君の流れを組んで、医療の面にも、自分なりの視点で着目してみました。ひとつ目のトピックとしましては、「日本の医療費支出は国際比較をすると相対的に少ない。」という点です。OECD, Health Date 2006-Frequently Requested Dateを参考に、国際比較を簡単にしてみますと、?全医療費の対GDP比は非常に小さい、?国民一人当たり医療費支出は非常に小さい、というように、上記の主張を肯定されるようなデータが見受けられます。

しかしながら、ここで忘れていけないポイントは、”医療費支出が少ない事は本当に悪いことなのか?”ということです。少ない医療費で、高い水準の医療サービスが提供されているのならば、「医療費支出が少ない」という事は、必ずしも悪いとはいえないと考えられます。

先ほども用いました、OECD, Health Date 2006-Frequently Requested Date参考にして、簡単に日本の医療の現状を、国際比較してみます。

?国民1000人に対する病床数はトップクラス、?国民100万人に対するCTスキャン設備数はずば抜けてトップクラス、?国民100万人に対するMRIユニット数はずば抜けてトップクラス、?新生児死亡率はトップクラスで低い、?平均寿命は世界一、というような事実があげられます。当然、これだけで「日本の医療は優れている」とは言えませんが、成果から見てみると、かなり良質である事は肯定できるのではないでしょうか。

しかしながら、問題点も指摘できます。

?国民1000人に対する看護士数は国際比較的には少ない、?国民1000人に対する医者の数は少ない、という事実が挙げられます。

ここでのポイントは、医療費支出が少ない→悪いことである、とは安易に言えない。現実的に、日本の医療の質は、良質であることを示すデータが存在する。

しかしながら問題点としては、看護士、医者の数が不足しているという点、という事になります。

付け加えですが、日本の医療費支出に占める、公的部門の負担率は実に81.5%、それに対して米国では44.7%であります(OECD, Health Date 2006-Frequently Requested Dateより)。これが意味する事は、日本では医療サービスは公的サービスという側面が非常に強い。よって、比較的に平等に医療サービスを享受できる。しかしながら、米国ではお金がなければ医療が満足に受けられない可能性があるという事を示唆していると考えられます。

二つ目のトピックに関しましては簡単に説明をしたいと思います。

ポイントは、「混合診療導入の是非」、「病院の営利化(株式会社化)の是非」です。

一点目の「混合医療導入の是非」ですが、現状では、”初診から治療の終了にいたるまでの診療行為に、保険のきくものと、きかないものを混在させてはいけない”というように決まっています。これを認めようというのが「混合診療導入」なのです。これに関して、二点、指摘しておきたいと思います。これは多くの人々が主張していることなのですが、?患者の財力に基づく医療差別が起きてしまう、?安全性と有効性に対する疑問、です。この主張の詳しい内容は割愛します。

もう一点は「病院の営利化(株式会社化)の是非」です。最近では経営難に陥った病院について、耳にする事があると思います。それを、市場の原理を用いて解決しようというものです。これに関して、REPRESENTでは、米国の事例をいくつか紹介し、皆から意見を聞きました。

今回は、皆から意見を聞きたいという事に焦点を置いてプレゼンをしてみました。予想以上に皆から様々な意見をいただき、そして経済学を学ぶ人からでは出にくいような質問をしてもらい、自分にとっても非常に勉強になる会になりました。

上手に答えられないポイント、知識不足な側面を多く感じましたので、これからの私にとっての課題と考えて、精進してきたいと思います。

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